「っあ。そうだ、お弁当、ありがと」




「……どうだった?」


シュウマイをゴクリと飲み込み、恐る恐る訪ねる。


「美味しかった。時々でいいから また作ってね」



嬉しい。


「うんっ」






「……紗弥さん」


真面目な声で話始めた一紗。


もう1つ、と思ってシュウマイに伸ばしたテガ止まる。


「少しは、俺のこと好きになった?」



本音を言うと。


一紗のことは好きだ。

だけどその好きはきっと男女の好きじゃない。


美味しいご飯を作ってくれて、優しくしてくれる。


甘えてるだけの、"好き"。



一紗に甘えすぎてしまった。



「好き、だよ」


ポツ、と呟くと、一紗が嬉しそうに笑ったのがわかった。



「…………だけど、ちがう、……これは……前みたいに男として、とかじゃ……ない……」





「………………」



無言になった一紗を見る。



「…………わかった…諦めるね」



スッと立ち上がり、スーツに着替えてさっさと部屋を出ていってしまった。




なにも、言えなかった。