私が鍵を閉めてバッグにしまうと、一紗は手を差し出す。 「紗弥さん」 「ん?」 「……好きだよ」 「ん?……うん」 差し出された手に自分の手を重ねて、なんだか不思議な一紗の言動を不審に思いながらも歩きだす。 これから2週間後。 1年の記念日を目前に控えた、どんより曇った日曜日のこと。