玄関を塞ぐ一紗の体を押し退けて麗に声をかける。
「どうしたの?こんな時間に」
「渉くんと喧嘩したー」
「ありゃ」
「どうぞ、中へ」
一紗が自分の家のように麗を招き入れ、ソファに座らせた。
「吉川さんも、アイス食べます?」
「え、いいの?」
「たくさんありますから」
冷凍庫から出した、ファミリーサイズのバニラアイス。
いや、買いすぎだから。
「てゆうか、なんで奈良原くんがいるの?」
「あー、ごめんね、言ってなかった」
「ビックリしちゃったよ」
「なんか入り浸ってるんだよね、2週間くらい前から」
「そうだったんだ」
「そうなんです、紗弥さんすっかり俺に胃袋つかまれちゃって」
「黙ってて」
キッチンから会話に入り込んできた一紗を一刀両断。
「で?なに?喧嘩したって」
麗が彼氏さんと喧嘩なんてすごく珍しい。
「…………私は夏休みに沖縄に行きたいって行ったんだけど、渉くんはグアムがいいんだって」
……………………
空いた口が塞がらないってまさにこのこと。
「……え?」
「喧嘩って、それで喧嘩したの?」
「違うよ!私は紅いもタルトが欲しいの!グアムじゃ買えないでしょ!」
…………oh……