でも、大事な奴がいるとか……
「じゃあ、なんで抱きしめたの?」
「あぁ……橘さんが紗弥さんにピッタリくっついてたから、対抗心?」
意味わからない。
「現に、あのあとすぐに滝野とは別れて紗弥さん追いかけたし」
「途中までね」
「え?なに言ってんの? 家まで無事を見届けたよ」
えっ
「気持ち悪い」
「何回目?そろそろ俺も傷つくなぁ」
「それストーカーって言うんだよ」
「嘘だよ」
「嘘なの?」
「うん、嘘。他に好きな人ができたっていうのも、別れたいって言うのも全部嘘」
……え、なにこれ、夢?
わたし、まだそんなに一紗のこと好きだったの?
いやいや、ダメだ。
「だから、もう騙されないってば」
「騙してなんかないって」
「わたし、もうイケメンは信用しないから」
「え?紗弥さん、俺のことイケメンだと思う?」
「……気持ち悪いけど顔はね」
あれれ、なんだろう、一紗に気持ち悪いって言うのが普通になってきちゃった。
全然気持ち悪くないんだけどね。
「なにが気持ち悪いの?」
「…………全部」
本当にわたしは素直じゃない。
「あ、てゆうか鍵、返してよ」
「えぇーヤダ」
「わたしはいらないから返す!」
「持っててよ」
「いらない」

