スルーするのが上手くなったな。
店員さんに促されるまま、椅子に座りメニューを覗く。
「あ、ロコモコ……」
美味しそう。
「俺は照り焼きチキンにしますけど、紗弥さんは?ロコモコでいいですか?」
「うん」
「すいません」
店員さんを呼んで、オーダーする一紗。
まさか、また二人で出掛けるなんて夢にも思わなかったよ。
「ねえ、」
「? なんですか?」
「敬語……気持ち悪い」
「気持ち悪いですか?」
「うん」
一紗を睨むと、フッと吹き出した。
なんで笑うの?今の、笑う要素あった?
「ごめんね紗弥さん」
気持ち悪いほどの笑顔。
「紗弥さん、睨んでも全然怖くないんだもん」
あの時も、と言って軽くわたしの頬っぺを手の甲で叩いた。
「わたし、本気だから」
「あぁ……いいよ、俺も本気で紗弥さん取り戻すから」
「絶対騙されないから」
「騙した覚えはないんだけどね」
「で?誰なの、好きな人」
「だから、いませんて言ったじゃん」
「営業部の……」
「滝野?」
「うん」
「あいつはただの同期」
「…………ただの同期と?」
「紗弥さんと同じだよ。同期と飲み会の帰り」