「あれ?聞きませんでした?…」
「きゃっ」
「宮内さんより大事な奴がいるんです」
隣の子の肩を抱いて言った。
あぁ、そうだ、営業部の滝野さん。
可愛いなぁ、なんて顔を凝視してしまった。
一紗の言ったことはわかってる。
好きな人ができたと言われたんだから。
ガラッ。と後ろのドアが開いて
「あれ?吉川は?」
「…あ、い、今 渉さん来て帰ったよ」
「あぁ、そうなんだ」
そう言ってから、一紗に気がつく。
「あ、こんばんは、奈良原」
「……こんばんは」
そういえば物部は全然飲んでなかった。
よかった、マトモな人が来て。
「じゃあ、俺 橘送ってくから送れないけど気をつけて」
「うん、大丈夫」
「おう、また明日」
「ありがとね、バイバイ」
物部と橘とは逆方向。
手を振って別れた。
一紗には1度も目を向けなかった。

