「俺奈良原さん一発やってきていいっすか?」


「ヤメテ」


一紗がいる営業部はこの真上だ。



「もう、いいんだよ」


「……無理しなくていいっすよ」


「あ。高橋くん、なんの用だっけ?」


「あぁ!納品書の確認を」


「りょーかいでーす」


紙を受け取る。


「ヤケ飲み付き合いますからね」


「うん、じゃあ今度付き合ってもらおうかな」


「マジすか!いつでも言ってくださいね!」


予定あってもこじ空けるんで!って言って、去っていった。




予定こじ空けるって、どんなよ?


「……高橋くん、イケメンだよね」


「ね」


「……………………」


ん?


「なに?」


眉間にシワを寄せてる麗に、納品書から視線を移す。


「高橋くん、紗弥のこと好きだと思うの」


「えー?イケメンはもういいよ」



イケメンは美女が言い寄って持ってくんでしょ。どーせ。


フンだ。


「わたしもうイケメンには騙されないからね」


「年下彼氏くんも騙したわけじゃないと思うけど」


「人並みの人と付き合うよ」


なにもかも人並みの人がいい。


一紗は業績も飛び抜けて、出世頭って囁かれてる。



「あっ、経理の王子が来ましたよー」


麗が見てるほうには、わたしたちのいる経理の王子と囁かれてる橘がいた。


「宮内ー」


「…………」


なに?


なんで皆さん絡んでくるの?


放っといてほしいよ。


パコッと後頭部を叩かれた。


「…………」


「お前、ぶっさいくだなー」