「あ、俺紗也と約束してんだった!やべー!」
隣であたふたし出す小暮。
紗也ってのは、小暮の彼女。
毎回毎回小暮ののろけ話に登場する、ギャルかじった様な女。
あんなギャルのどこがいいんだか。
…こんなウザいやつのどこがいいのかもわかんねぇけど。
「ごめん、秀司。俺行かなきゃ!」
「さっさと行けば。うるさそうじゃん、あいつ」
「おい、悪口はゆるさねーよー?
ってことで、じゃあ明日な!絶対学校来いよー!」
無駄に速い足で走り去っていった。
どこまでも、バカップルだな。
彼女とか、めんどくせぇだけじゃん。
俺も小学生とか、幼稚園とか小っさい頃は、気になる子のひとりやふたりいたけど。
そんなのはどうせ、自分の足手まといになるだけ。
愛だの恋だの、薄っぺらいんだよ。
そんなのが生きてる中で、何になるってんだよ。
「馬鹿みてぇ…」
「誰が馬鹿だって?」
低い声が後ろから聞こえて、振り返った時に一発食らってた。
さっきのやつ、起きたのか。
「てめー、何俺の煙草取ってんだよ」
もう一発食らうなんて間抜けたことは、しねぇ。
俺の顔に向かってきたその拳は振りかざしに終わった。
…ナメんな。
小暮への劣等感、井上をウザったいと思う気持ち、喧嘩をしているという快感、
強く掲げた拳に色んな感情を詰めて、前にいる男をひたすら殴った。
俺は、おかしい。
多分、おかしい。
喧嘩している今が、なにより、幸せだって、そう思うんだから。
相手が例え弱くても、なんでもいい。
俺を殴ろうとしてて、俺はそれを阻止して、そいつを殴る。
俺が胸を張って、自慢できる瞬間。
─これしか、ないんだよ
俺には。


