小暮といると、俺ばかりが損をしているような、そんな感覚に陥る。
多分これを、劣等感っていうんだろうな。
小暮は明るい。いつも笑ってるし、怒ったところを見たことがねぇ。
ヘラヘラしてて、軽い。でも喧嘩の時は本気の顔になる。
友達も、多い。ヤンキーの癖に、センコーにも好かれてる。
…俺には無いものを、こいつはたくさん持ってる。
それがどうってワケじゃねぇ。
別に俺がそれを羨んでるとかじゃなくて、俺と小暮は大きく違うってことを言ってるだけ。
ただその事実が、俺の心の端の方に、ずっと住みついてる。
ってことはやっぱり、どっかで羨ましく思ってるのかもしれねぇ。
俺がそれを、認めたくないだけなのかもしれねぇ。
俺と小暮はほとんど同じ。
なのに俺と小暮は、全然違う。
小暮の方が、確実にステイタスが上。俺がまともに張り合えるなんて、喧嘩ぐらい。
俺らがホントのダチだったら…劣等感を感じても、気にならねぇのかもな。
でも俺らはそんな、綺麗な関係じゃねぇよ。
それは、お前が一番分かってんじゃね―の。
いつも食べてるカレーパンを頬張りながら、鼻歌を歌う小暮。
お前は俺との関係を、“ダチ”だと思ってんのか?…いや、そんなことすら、考えたことがねぇんだろうな。
俺は小暮を“同じような”仲間だとは思ってるけど、ダチだとは思ってない。
ダチなんて、呼べるような仲じゃない。
だけど3年間も偶然同じクラスで、似た者同士、だから一緒にいるだけ。
ただ…それだけ。
俺と小暮は雰囲気で、一緒にいるだけなんだ。
漫画や映画でよく見るヤンキー同士の熱い友情なんて物はねぇ。
冷たいって笑われてもいい。
でも俺と小暮は多分、これぐらいの距離でいるのが一番いいんだよ。
どうせこれからの1年、また一緒に過ごすだけ。
卒業してしまえば、きっともう会わない。
俺たちは、そういう仲。
小暮には深く踏み込まない。小暮も俺に深く踏み込んでこない。
…これで、いい。
俺は喧嘩さえできれば、友情なんて要らねぇんだ。


