でも、彼はもう隣にはいない。
なぜなら彼は、東京に引っ越してしまったから。
私達にとっては、東京という場所はあまりにも遠く感じて。
イメージもつかない見知らぬ街。
そんなところに、前澤は親の仕事の都合で引っ越してしまったのだ。
編入試験も無事合格した、とにこにこ笑っていっていたのを覚えている。
元気でね、とクラスメイトが話しかける中、私はその輪に入れなかった。
きっと泣いてしまう。
そんな重い彼女になりたくない。
でも、ポロポロと涙を流している女子の姿もあった。
彼女は私なのに。
最後まで、醜い嫉妬心が残っていたのを覚えている。

