その時、前澤の携帯が鳴った。 前澤が名前を確認したとたん、顔をしかめる。 …もしかして、幼馴染? 「…せっかく来てくれたのにごめん、俺…」 「いいよ、行っても。私ももう帰る」 「有紗にはちゃんと言っておく。メールできるようになったら、必ずするから」 その言葉で十分だよって、いえる彼女になれたらいいのに。 「じゃあ、また」 前澤は急いで出ていく。 伸ばした右手は、宙をつかんだ。