血の気が引いた。 土曜の夜の繁華街は明るくてうるさいけど、一瞬だけ光も音もわたしの中から排除された。 別にもともと貧血っぽいわけではない。だから血の気が引く、なんてどんな感覚か知らなかった。 さーっと、わたしの持っているエネルギーがすべて奪われたような感じで、思考が止まって、持っていたスマートフォンを落としてしまった。 「うわっ!っと!…セーフ!大丈夫?液晶割れてない?」 「あ、ああ!ありがとう!大丈夫みたい、ちゃんと反応するし」 この人のこの顔はわたしだけのものじゃない。