「部長、一口いかがですか?」



「え!くれんの?悪いなぁ!じゃあ、いただきます。」



お箸を持ちながら私の席まで歩いてきた荒海部長は、そ~っとお弁当にお箸を伸ばす。




「お前、めっちゃうまいやん!色合いとかも最高やし!俺にも作ってくれや!!」


冗談だってわかってる。


関西出身の荒海部長はそうやって、誰にでも調子のいいことを言う。



9月に大阪支店から転勤になった部長。


朝礼で挨拶をする姿を見て、私は恋に落ちてしまうだろうと予感した。




でも、だめ。


不倫になっちゃうもん。


好きになってはいけない相手。


そう思いながらも、日に日に惹かれて行ってしまっていた。