「山口、今日のおかず何や?」
その一言が欲しくて、私は毎日お弁当を作る。
荒海部長の関西弁が好きだ。
荒海部長の銀縁の細い眼鏡が好きだ。
荒海部長の大きな手が好きだ。
優しそうな笑顔も、真剣に仕事をしている時の眉間のしわも、私の心を捕らえて離さない。
手を負傷しながら作ったお弁当を、そっと開けると、部長が声をかけてくれた。
「今日は、何や?山口!!」
「今日は、エビチリです!」
「まじで?お前、そんなん作れんの?すごいやん!」
男性社員はみんな食堂へ行く。
女子社員は、近くのお洒落なカフェのランチを食べる。
私は、大好きな荒海部長と二人きりのお弁当タイムを満喫していた。