来ないでバケモノ
殺さないでバケモノ
バケモノバケモノバケモノバケモノ…
助けてもらっておきながら、ソレはねェだろ。
残った力を振り絞って、ソージは顔を横に向ける。
彼が目にしたその時のダリアからは、いつものあどけなさは消えていた。
美しさは少しも色褪せない。
けれど、長い年月を重ねて全てを諦めてしまった、老女のように見えた。
イヤだな。
こんな彼女は。
美しいまま年老いたダリアが笑う。
「アハハハハハハハハハハ!
そう、私はバケモノ!
私は悪魔!」
哄笑し続けるダリアの唇から、二本の尖った八重歯が覗く。
いいや、違うな。
あれは牙。
そんなの、知らなかったな。
そんなに大口開けて笑うトコロなんて、見たコトなかったから。
イヤだな。
こんな彼女も。
「逃げなさい!
振り返らずに走りなさい!
殺されたくないのなら、今すぐ家に帰りなさい!
さぁ、立って!!」
ダリアがスタートの合図さながらに両手を打ち鳴らすと、飛び上がった女たちは我先に逃げていく。
蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
ダリアに背を向けて。



