だから今ソージが手にする刀は、ダリアが持って行った菊一文字則宗のような、お飾りの一振りではない。

最後に屍の山を越えた時、自らが斬り殺した誰かの手から奪った刀。

これこそが人斬りの刀…

ソージは鞘に収めたままの刀を腰に提げ、元・石灯籠の陰から進み出た。

ユラリユラリと近づくソージに、酒を呷っていた見張りの一人が気づく。

瞬きを数回。
それから顔を引きつらせて…


「でで出たぁぁぁ!?
ゾンビだぁぁぁぁぁ!?」




あー… そう?

やっぱそう見える?
篝火に下からボンヤリ照らされると、尚更そう見える?

悲鳴に驚いて咄嗟に酒壺を投げ出した他の男たちも、ソージを目にした途端、及び腰になる。

ついでに『ゾンビだゾンビだ』と、震えながら口を揃える。

多少凹むケド…

コレは悪くない展開かも。
このままゾンビで押し通せば、あっさり不戦勝かも。

よし、俺はゾンビだ。

両手をダラリと前に垂らして、足を引きずりながら歩いて、セリフはコレで決まりだろ。


「かゆうまぁぁぁぁぁ」


蒸し暑い真夏の夜だというのに、体感気温がシベリアレベルまで低下した。