その時カオリは、禁を破った男を許し、恋人と共にいる権利まで与えた伯爵の懐の深さに心酔した。
けれどカオリの知らないトコロでは、あんなに怖がり、恋人はもういないとまで言い切った男が、修行場に入る決断をするなんてちょっとおかしいね、と噂されていた。
ただの噂だケドね。
他にも、あの時はこうだったね。
他にも、あの人はああだったね。
噂をトータルすると、修験者は修験者ではなく、修行場は修行場ではない気がするね。
『伯爵にとって都合の悪い者』と、『それを閉じ込めておく場所』みたいな気がするね。
そうでない人も数多く修験者になっているのだから、ほんと笑っちゃうような噂だケドね…
(笑えねェよ!
ちょっとどころか、かーなりおかしいよ!ソレ!!)
己の不甲斐なさに、カオリは両手で頭を掻き毟った。
ちゃんと目を開けていれば、もっと早く異常事態に気づけた。
盲目にも程だった。
心酔ばっかしてた自分、脳髄撒き散らして死ねェェェェェ!
だが、自己嫌悪に陥ってばかりもいられない。
タナカの話はまだ続いていた。
「まぁでも、本当に噂レベルだったンですよ。
伯爵の教義を聞くと、その都度疑念も吹っ飛んで、みんな『ダヨネー』って納得してたし。
…
でも…
この前のイベントで…」



