合宿所までの一本道を、カオリは重い足を引きずりながらフラフラと歩いていた。
原付を道半ばで乗り捨てたままだが、そんなコトにも気づけない。
『コイツ、どーします?』
『もうイイわ
ノエルちゃんの言うコト、聞いてくれないし』
『…拗ねてます?
まぁ、そうですね
説得より、とっととサムを始末しましょう』
『ソージの言う通りね
だから、電波団長はもう帰ってイイわよ?
できれば…
ココを離れて、アナタの居るべき場所に、ね』
そんなやりとりの後、カオリは呆気なく解放された。
フラフラなのは、疲弊しているからではない。
目にしたコト、聞いたコトがキャパシティーを超えたから。
足取りが重いのは、傷を負わされたからではない。
信念が揺らぎ、本当にこの坂を登っていいのかわからないから。
脳裏に焼きついて離れない、雪のような白に滴る鮮やかな赤。
あの光景を目の当たりにした瞬間、思考は完全にフリーズした。
怖かったからではない。
あまりに淫らだったから。
襟元を乱し、互いの首筋から血を啜り合う男と女。
ただそれだけのことなのに…
ナニも知らない処女のように頬が熱を持ち、男日照りのアバズレのように子宮が疼いた。