「…天竺牡丹ですか?」


「この国じゃ、そう言うの?
でも、ダリアよ。」


軽く頷きながらそう言った彼女の横顔を、ソージはチラリと盗み見た。

んー… 天竺牡丹か…

彼女には、似合わねェンじゃねーかな?

そりゃ綺麗っちゃー綺麗なンだケド、真っ赤だもん。

彼女の美しくも儚い容姿に準えるなら、月下美人とか。
彼女の無垢な心に準えるなら、百合とか…

要するに、彼女のイメージは純白なンだもん。

けれど、彼女は言い募る。


「短い夏を炎のように咲いて散る、人間の命そのもののような花。
好きなの。」


天竺牡丹を…
いや、ダリアを見つめたまま。

その眼差しには、『好き』などという言葉では簡単に表すことができないような、焦がれるほどの憧憬が込められていた。



そう?
そんなに?

そんな、月が欲しいと泣いているような目で見つめるほどに?

なら、似合おうが似合わなかろうが、彼女の名は…


「ダリア…」


ソージはそっと囁いた。

大切な言葉を紡ぐように。