花の名は、ダリア


絶滅を避けるために繁殖を繰り返す。
これが、種の本能。

だが、たった一つの個体が死ななければ?

種が絶えることはない。

つまり、繁殖能力は必要ない。

『ノエル』は正真正銘、地球上でたった一つの奇跡の種。

初めから、病気が治れば人間になれる、なんて単純な話ではなかったのだ。

この結論に、サムは絶望した。

これでは『ノエル』は永遠に孤独なまま。
これでは『ノエル』は救えない。

それでも。
どうしても。

『ノエル』の悲しみを癒してやりたい…

悩んだ末、サムは発想を転換した。

『ノエル』を人間にできないのなら、人間を『ノエル』に近づければいい。

そうすれば、もう誰も『ノエル』を奇異の目で見たりしない。
誰も『ノエル』を忌み嫌ったりしない。

むしろ、一族の神として崇めるようになる。

『ノエル』の血を人間に与え、『ノエル』のための国を作る。

最初の約束とは違うが、コレが『ノエル』を救う唯一の手段だ。

けれど、当の『ノエル』はなんと言うだろう。

賛成してくれるだろうか。

『ノエル』が人間を、人間の営みを、人間の儚い命を、誰よりも愛していることを、サムは痛いほどに知っていた。