花の名は、ダリア


キィ…

微かにドアの開く音。

ソージは壁に背をつけたまま、少し首を反らして音がした方向を振り返った。

もちろん、奇行に走りがちなダリアをしっかりと抱き寄せて。


『あの人?』


と、色のない唇が音を出さずに動く。

そうだ。
あの、団長だ。

一人で会場から出てきた団長は、ホールドアの向かいにある幾分小振りなドアの中に、警戒する素振りもなく消えていった。


「行きましょう。」


足音を立てず、ソージが動き出す。
ダリアも後に続く。

素早く移動し、ドアに耳をつけて中の音を確認するが…

無音。

ドアノブを握り、思い切って薄く開いてみるが…

無人。



え?
無人?


「…うっそ。
ナンデ?」


無遠慮にドアを大きく開け放ち、ソージは目を見開いた。

ロッカールームと思われる、その細長い部屋には、団長どころか人っコ一人いなかった。