「怖くないンですか?」


ソージは大人しく前を向いたまま彼女に訊ねた。

彼女は今、ソージの背後にいる。

右耳の下で結ってあったパサパサの髪をほどいて。
丁寧に梳き櫛をあてて。

さっきから、細かい編み込みを大量に作られている気配がして不安が胸をよぎるが、まぁ…柔らかく触れる冷たい指先が心地好いので、ソコはツッコまずにいよう。


「~♪~~♪ナニが~?♪」




鼻歌混じりでスゴく楽しそうだし、やっぱツッコまずにいよう。


「死ぬことが。」


「アナタは~♪
コ~ワ~い~♪のぉぉぉ?♪」


「…
ハイ‥‥‥」


鼻歌が止んだ。

暴れ回っていた頃も。
こんな身体になってからも。

誰にも悟られぬようにしてきた弱い自分を曝け出してしまったことに気づいて、ソージは唇を噛んで項垂れた。

だが、堰を切って溢れ出した思いは、もう制御できない。


「怖いですよ。
死んだらどうなるンでしょう?
死んだらドコにいくンでしょう?
ナニモカモ失って?
ずっと一人キリで?
死の恐怖を消し去るモノは、結局『死』だけなんでしょうか?

あー… ナニ言ってンだ、俺。」