ゴトリ…

クララの手から銃が落ちる。

彼女は声もなく蹲り、汚れた床に両手を着いた。


「アナタに、彼から伝言があるわ。」


安楽椅子に手をかけて軽く揺らしたダリアの口から、フランシスの言葉が語られる。

舞い上がった塵が、フランシスの思いが、顔を伏せたクララに降り注ぐ。

彼女への優しさだとか。
彼女への愛だとか。

そういう美しいモノが凝縮された伝言だと、ソージは思った。

けれど…

当のクララにとっては、どうだろう?


「『幸せになれ』ですって…?」


聞き取れないほどの声で、クララは呻いた。

それから顔を上げ、叫ぶ。

ヒステリックに、叫ぶ。


「私は幸せだったのに!
どれだけの人を犠牲にしようが、そんなのどうでもよかったのに!
フランシスと一緒にいられれば、他はどうでもよかったのに!!」


(コッチも、やっぱりかぁぁぁぁぁ!!)


狂ったように栗色の髪を振り乱すクララから目を逸らしたソージは、眉間を指で押さえて項垂れた。

こんな成り行きは、充分予測できたのだ。