ソージとクララを取り囲んでいた男たちも、興醒めした面持ちで一人二人と散っていく。


「ありがとうございました…」


深く息を吐いて緊張を解いたクララは、震える声で呟いた。

けれど…
誰に向かって言ってンの?

ソージは別の方向を見ている。

散っていくモブたちの中にいる、痩せ型の陰気な顔をした男を無表情に見ている。

ソイツはナニを見てンの?

クララを見ている。
暗い眼で見つめている。


「来いよ、アラン!」


アランと呼ばれたその痩せた男は、仲間の声で夢から覚めたように踵を返して去っていった。


「あの… ありがとうございました。
あの… あのー! ソージさん!?」


「あ?」


ソージもまた、クララの声で夢から覚めたように彼女を見下ろした。


「ナニ?」


「ありがとうございました。
その… 庇って下さって…」


「は?
おまえを庇ったつもりはねェよ。」


「…」




あんまりだろ、おい。