「とりあえず、寝泊まりする場所を確保しますか。
宿か、借家か…」


「どうして?」


辺りを見回す俺の顔を覗き込んだダリアが、不思議そうに首を傾げた。

『どうして?』って…

え?

まさかこの人、家まで強奪する気なの?

恐る恐る、俺は訊ねる。


「…
今までドコで寝泊まりしてたンです?」


平然と、ダリアはある一角を指差す。


「あーゆートコロ。」


ソッチを見て、瞬き。
指で目を擦って、また瞬き。

何度見てもソコは、煉瓦造りの建物と建物の隙間。

夜の潮風が、ポニーテールにした俺の髪と彼女のペールプロンドを乱す。

そうか。
風の音で聞き違えたか。

もう一度、俺は訊ねる。


「…
路地?」


もう一度、ダリアは答える。


「そうよ。」




もう、『雑』じゃ済ませらンねェよ。