昼休みになって、皆で
屋上へ向かっている時、



「今藤さんっ♪ちょっと
聞きたい事があるんだけどっ♪」




全く知らない女子1人が
私の事をひき止めた。




「聞きたい事?」


「うんっ♪……聞きたい事。」




この感じ…。
絶対聞きたい事なんか嘘だ。
もっと他の策があるはず。


クレープ食べたいしなぁ…。




「でも私、皆と屋上でクレープ
食べるし…。」



「いーからいーからっ♪」



「えっ…ちょっ…あー皆ごめんっ!!
先食べててっ…すぐ行くからっ!!」





1人の女子が無理矢理私の
腕を引っ張った。


どうせ聞きたい事なんか
ないのにね…。

これじゃ、クレープ食べれないよ。
今は1人しかいないけど、人数は
もっといるはず。


まぁ、いいや。
手出したら私も黙ってないからね。
思う存分楽しませてもらうまで。





私の腕を引っ張って連れてきた場所は、
いつぞやの校舎裏。



(あーぁ。これは本当の喧嘩が
始まっちゃうかもね…。)




「ねぇ、今藤さんっ♪下手なことは
出来ないんじゃない…?」



「え?」




私を連れてきた女子が指差す方を
見れば、そこには…たっくんが。



「…たっくん?!何でそんな所に…。」



たっくんは、たくさんの女子に
囲まれてすごく不機嫌そう。


私には何もさせてくれないってわけね。
ずっとやられてろって事か。




「ねぇ、今藤さん。大人しくしてないと
拓也さん…奪っちゃうよ…?」



うるさい人。
私は、たっくんにしか
興味ないね。




「…たっくん?たっくんなら
その女子たち何とか出来るでしょ?」



「あ?俺が他の女に触れたら、
不機嫌になるのは雪菜だろ?
…それとも、俺も遊びに混ぜてくれんの?」



「うん。…一緒に遊ぼ。」





私がそう言うと、たっくんは
意地悪く笑いながら立ち上がった。


女子たちはすこーしヤバそうな
顔してるけど、たっくんを
おとりにしたのが運のつき。



(もう…ゲームオーバーだね。)



早かったなぁ~…。
私をここに連れてきたじてんで
遊びは終了しちゃったんだから。




私は構えると、怪我しない程度に
まわりにいる女子たちを背負い投げした。


たっくんもそのやり方みたいで。




「おい、雪菜。背中お留守にしてっと
あぶねぇぞ。」



「分かってる。」





たっくんに言われ、後ろも
気をつけようと振り返ったとき、
冷たいものが私にかかってきた。


(冷た…何これ…冷水…?)


秋で寒いのに、水なんてぶっかけたら
よけいに寒くなるのに…。


こういうことされるとさ、
背負い投げじゃ物足りなく
なるよね。





「おい、雪菜っ!!…わっ?!」


「…拓也さぁん?…今藤さんの事
心配してる余裕ないんじゃない…?」





たっくんは1人の女子に
覆い被せられていて。

たっくんならどかすなんて余裕だけど
さすがに女子に怪我させるくらいの
技は出せないみたい。




「ねぇ…今藤さん…拓也さんのこと
奪っちゃうよ…?いいでしょぉ?

毎日うざいんだよ。男に媚び売ってさ。
男子はあんたのことしか見てない。

ほんとうぜぇよ。

うちらは、とられたよ。好きになった
男子は皆あんたのことしか眼中に
なくってさ。
だからうちらも奪うよ。あんたの
大切なものを……ふふっ。いい気味。」



「……っ」





たっくんの上に乗っかってる1人の女子は
私にそう言うと、たっくんにキスをした。



(やだ…やめて…。)



許せない…。
絶対許せない…。


他の女子たちは、相変わらず
私に水をぶっかけてきて。



(…今回がお初だよね…。
…本気だそって思うなんて…。)





私は、拳に力をいれて、まずは、
まわりにいる女子たちを回し蹴りで
倒れさせた。




「まだ…いける。まだ全然いける。
……たっくんに手出したらこの私が
許さない。それ承知の上でキス
したんだよねぇ?聞いてんの?」




私は、たっくんの上に乗っかってる
女子に近づいて、拳を振り上げた。

殴りかかろうとすると、たっくんが
私の拳を受け止めた。




「…雪菜、そこまでだ。
まわりを見てみろ。」




たっくんに言われ我に返り、まわり
を見ると、そこら中に女子たちが
倒れていた。



(…私がやったの…?)




「…雪菜、我を忘れて技を出せば、
時には人を死なせる事もある。
蹴った所がきゅうしょじゃなくて
本当に良かった。」




「…たっくん…。」



「…でもサンキュな。
…妬いてくれたんだろ?」





たっくんは、頭を撫でながら
私にそう言った。




「うっさい…金髪。
……キス…されて…やだった…んん!!」




たっくんは私が言い返すと
カプリと私の唇に噛み付いた。




「愛がねぇキスなんて、
キスじゃねぇよ。」



「……うん。」



「…雪ちゃんには、毎日のように
“愛”のあるキスしてんだろ?」





たっくんはそう言いながら私の
手を握って歩き出した。


たっくんは少し嬉しそうで。


でも、やっぱりたっくんが他の人に
キスされたのが悔しくて、悲しくて
泣くのを我慢する代わりに、私は
繋いでる手をぎゅっと強めた。








***




たっくんと屋上へ向かうと、
皆驚いた顔をした。



「ちょっ…!!雪菜?!
ビショビショじゃんっ!!!!」


「雪菜ちゃん?…どうしたの?
さっきの女子のせい?」


「おい、今藤…。黙ってたら
わかんねぇだろ?そこの拓也ってやつも。」


「雪菜…。風邪引いてない?
私のタオルかそっか?」






(皆…。)





私たちに駆け寄ってくる皆は
クレープ持ってて。

スゴく美味しそうな香り…。

ビショビショな全身なんて
関係ない。
クレープみたら、食欲の方が
勝っちゃうよ。





「高ちゃん。私のクレープ。」


「え…?…あ、ほらよ。」




高ちゃんからまだ温かいクレープを
受け取って、私は床に座り込み
クレープに口をつけた。


美味しい…。
やっぱりクレープは美味しい…。

濃厚な生クリームに
甘いフルーツ。
モチモチしてる生地。



本当に最高♪



「…美味しい…。」


「あぁ、雪菜っ。濡れたままだと
風邪引いちゃうよっ。」




由香がいつも持参してるふわふわの
タオルで私の濡れてる髪の毛を
優しく拭いてくれる。

皆もつられて座り込み
一緒にクレープを食べた。


この人の温かみがいいんだよね。
こんなに温かいんじゃ
寒さなんて、冷たさなんて
全然へっちゃら。





「ん?…たっくんも一緒に食べよっ。」




私は、たっくんの手を引っ張って
床に座らせ、私のクレープを
半分こにして食べた。


皆で食べれば、もっと
美味しく感じる。


私…皆に出会えて本当に良かった。




「皆…ありがとっ。」



「「何が?」」



「なーんでもっ」






***






私たちは笑いあって、
昼休みが過ぎても、授業が始まっても
皆で屋上で遊んで楽しんだ。



気づくと、空が少し赤く
染まっていて。





「ゆっきなー。拓也さんと結婚
するんでしょー?」

「あ、そうだよ!!うちのこと絶対
結婚式に呼んでよねっ!!」



「あー、由香も皐月もっ。
皆呼ぶからっ。絶対呼ぶっ。」





飛び付いてきた2人を私は
なだめた。


結婚かぁ…。
でも、もうちょっと先だし。




結婚式には、絶対、
由香と皐月、桑田君も。
高ちゃんも呼ぶよ。


(楽しみにしててねっ。皆っ。)