「ねぇ、たっくん…。
今日って、何日…?」


「えーっと…?…12日?だと思うけど。」





あははー…。
しまったぁ…!!!!!!!!


今日学校じゃん!!
すっかり忘れてたぁ!!!!!!


これは、遅刻中の遅刻ですね。
完璧の遅刻ですね。



「…たっくん…。
私、今日学校…。」


「はぁ?!マジかよ…。専用車
貸すから、一緒に行こう。」



「…うん。」





朝食をのんびーりと食べ、
部屋着のままたっくんのベッドで
ごろごろしていた私。


もう皆授業受けてる時間だよ…。


私は急いで制服に着替え、
たっくんに髪の毛をブラッシング
してもらった。




「ほら。行くぞ…!!」


「うんっ!!!!」




たっくんのお家から出てすぐに
専用車に乗り込んだ私たち。
車は猛スピードで走りだし、
15分程度で到着してしまった。


たっくんはこのままお見送りと
思いきや、何と校舎までたっくんが
ついてきた。




「あの~…?たっくん…?」


「お前だけじゃ心配だ。任せとけ。
ここの校長とはちょっと顔見知りでな。
俺も一緒に謝ってやっから。」



「…たっくん、ありがと…。」


「おうよ。」




私は、たっくんの手をしっかり
握って、2人で職員室へと向かった。


ドアをコンコンして入れば、
プンスカしてる高ちゃんが
落ち着かない様子で席についてるのが
見えた。


そんなピリピリの高ちゃんは
物音にも敏感になっていて。




「あん?…あ!、こんどーーぅ!!!!!!!!
お前と言うやつは!!!!
会議室来い!!か・い・ぎ・し・つ!!」




ドスドス私の方へ歩いてくる
高ちゃんはすごい形相。

鬼のようで怖かった。




「…うっ…たっくん…!!
高ちゃんがっ…こ、怖いぃ…。」




怖くて動けず、私が出来ることは、
助けを求めることと、繋いでる手を
ぎゅっと握りしめることだけ。


高ちゃんは私の前へ立つと、
鬼のような顔で、



「お前は、俺の仕事の手伝いを
やれぇーぃ!!!!休み時間!!!!昼休み!!!!
放課後!!!!全部だっ!!!!」




(ひっ…!!)




やばい…。
怖い…怖すぎるよ…。
高ちゃんこわい…。





「うっ…うぇ…ひっく…うぇぇぇん!!
…何で怒鳴るの?!…怒鳴っても何の
意味もないのにぃ……うぇぇん…っ…
たっくーん…っ…ひっく…うっ…
こわいぃ…っ…こわいよぉ…」





そうだよ。
怒鳴っても意味なんてないよ。
ただの八つ当たりみたいじゃん。
ストレス発散してるだけじゃん…。


すると、さっきから黙っていた
たっくんが今やっと口を開いた。




「おい。雪菜泣かせんな。」




それだけ言うと、たっくんは、
「帰る。」と私の腕を引っ張って
階段を降りようとした。



が。



「ん?…君は、拓也君じゃないかね?」


「あ?…誰だじじぃ。…って!!
おいじぃさん!!ひっさしぶり!!」




階段をおりかけた時、校長が
たっくんを呼び止めた。

たっくんは校長のことじじぃとか
じぃさんとか言っちゃってるけど
2人が顔見知りなのは分かった。




(てか、じじぃって言って、じぃさん
って呼び直してるけど…。
全然変わってないんですけど…。)




校長は高ちゃんを無視し、
たっくんと私を校長室に招き入れた。







***



「わりぃなじぃさん。雪菜が
ほとんど学校遅れちまってて。」



「いやいいよ。雪菜ちゃん可愛い
もん。許しちゃうよ?校長先生。」



「じじぃのくせに地味に変態発言
止めてくんね?雪菜がかわいそーだし。」



「いーや、ほんとだよ?雪菜ちゃんは
本当に優しくて可愛くて…。
お家にもって帰っちゃいたいくらい…」



「おいっ?!何だ今の発言?!
ダメだよっ?!雪ちゃん持って帰ったら、
俺許さないからねぇ?!
じぃさんそれわかってんのっ?!」



「えぇ?先生は本当のこと言ってるよ?
先生は嘘ついた事ないよ?
実はこれ自慢。あはは。」



「うっせーよ?!じぃさん?!
頼むから雪菜のことは諦めてくれよ?!
じぃさん奥さんいんだろぉっ?!
あのね、雪ちゃんは俺のもんなの。
分かる?俺の彼女なの!!婚約者なの!!」



「あぁ、そうなの?」



「そうだよ!!!!」





このコンビ最高だな。
顔見知りっていうより、この仲は
けっこう昔からの仲って感じするよね。

てか校長があんな事思ってたなんて
私、もう校長に近づかないでおこ…。




「まぁ、っつー事だから。
雪菜はこのまま授業に参加って事で。」



「あぁ、いいよ。あとさ、拓也君も
今日1日だけ参加していきなよ。
どうせ雪菜ちゃんが男子に囲まれるの
は嫌なんだろうし。ボディーガード
&彼氏&婚約者&生徒として1日だけ。」



「はぁ?!まぁじぃさんの言ってる事は
一理あるしな。そうするよ。」




えっ?!
今日はたっくんと1日中一緒?!

生徒?ボディーガード?
嘘…。嬉しい…。

校長に挨拶し終えた私たちは、
たっくんが制服に着替えてから
教室へ向かった。





「…たっくん。」


「ん?」


「…何でもない。」





やばい…。
嫌な予感しかしない…。

たっくんは絶対…。



一緒にいられるのは嬉しいけど、
…でも今日はきっと学校では
一緒にいられない。

これは確信に近い。





「失礼しまーす。」





たっくんが挨拶しながら一緒に
入ると、皆一斉にこちらを向いた。


嫌な予感が的中したと感じたのは
次の瞬間だった。


教室にいる由香と皐月を除いて、
全員の女子がたっくんのまわりに
集まってきたのだ。


その衝撃で投げ飛ばされた私。

それに気づいた2人が私に
駆け寄って心配してくれる。




「雪菜、大丈夫?…てかどうしたの?
拓也さんと学校来るなんて…。」



「えへへ。実は…たっくんのこと
思い出したんだ。」



「「えぇ…?!…良かったね!!雪菜!!」」





2人には、親を通した正式な婚約を
交わした事、たっくんが制服を着て
ここへ来た理由を全て説明した。





「拓也さんらしいねぇ。
…てかどうすんの?拓也さん
囲まれてるよ?女子に。」



「…うん。分かってる…。
それも承知のうえだから…。」



「そっか…。まぁ私たちも
いるからねっ!!!!」



「うん。ありがと。」






結局、授業は自習になり、
女子はずっとたっくんの
まわりにいる。

たっくんはまじめに女子たちに
勉強を教えているけど
女子たちの視線はたっくん。





(はぁ…けっこうきついなぁ…。)





そう思ったとき、高ちゃんが
私のもとへやって来た。





「…何?…私もう明日から高ちゃんとは
口聞かないから。」



「…はぁ。悪かった。」



「…高ちゃん結構怖かった…し。」



「だから、怒鳴り過ぎて悪かったって。
悪いって思ってるから。」



「………許す。
…クレープ奢って。」



「分かった。」





何とか高ちゃんとも仲直りし、
昼休み、由香と皐月と桑田君の分も
買ってもらって一緒に屋上で
食べる事になった。


もちろん付録つきで高ちゃんも。




……どうせたっくんは女子たちと
いるかもしれないし。





私もそれなりに楽しんじゃお。