「あーぁ、俺の負け。
罰ゲームは、勝者にキスかぁ~」



部屋にはたっくんの
嬉しそうな声が響く。



「たっくん負けるのこれで何回目?!
ねぇ、絶対わざとでしょ!!本気出して
ないでしょ!!さっきから私勝って
ばっかじゃん!!!!」



「え?じゃぁ雪菜負けてみる?」



「負けるのは絶対やだ。」




たっくんは、「言うと思った。」と
言わんばかりの眼差しを私に向け
軽くキスをした。


はぁ…。
私が負けて、わざとたっくんにキス
させるやり方かと思いきや…。

たっくんはさっきからずっと
負けて、私はずっと勝っての繰り返し。



(たっくん絶対こういうことして
楽しんでるよね。)



ババ抜きをもう1回戦やろうと
カードを持ったとき、ドアがノックされた。


もう誰かが起きてる時間なのかと
思い、時計に目をやれば、何と
8時を指していた。




「坊っちゃま、お嬢様?
朝食の準備が出来ましたので…、」と
言いかけた使用人さんをたっくん
は遮った。




「あー、もう行くから。」




何で、遮ったか疑問に思ったけど、
その疑問の答えはたっくんが次に
とった行動で明らかになった。



たっくんは私の持ってるトランプを
何枚かさっと取って、私の手に
ジョーカーだけを残したのだ。




「雪ちゃん負けちゃったねー。
ほら、罰ゲームだよ。勝者の
俺にキスして?」



「…っ。」





何て事をたくらむ人だ。
使用人さんが朝食だと呼び掛けに
来たにも関わらず…。

きっとたっくんは、私からしなきゃ
永遠とトランプを続けるだろうな…。




「ほら、早く。」




急かすたっくんに余計に
鼓動が速くなる。

自分からなんて初めてだもん。
緊張する…。



私は、ゆっくりとたっくんに
口付けをした。



「はい、罰ゲーム終了。
朝食食べに行こうぜ。」


「うん。」




たっくんの声はなぜか上機嫌。
すっごくルンルン。

どうせ、私からしたからだろうけど…。

でも、自分も少しにやけてる。
だって、このゲーム結構何だかんだ
いって楽しかったしドキドキしたし。




「たっくん…!!…ありがと。」


「あ?何が?」


「ふふっ。なーんでもっ。」




たっくんより楽しんでたのは
結局自分だったのかもしれない。

でも、それでも全然いいや。
たっくんも私も楽しめたから。