目が覚めた頃は、もう朝方。

たっくんは、隣で
スヤスヤ寝ている。

時間は4時半か…。
皆寝ててもおかしくないよね…。


お庭でもお散歩してこようかな…。


ベッドから降り、部屋か
ら私は出ていった。



(えー…っと。ここが階下へと
繋がる階段かな…。)



下へ繋がる階段を降りると、
無事に1階へとたどり着いた。


ちょっと違和感あるけど…。


(てか…ここ暗…。)


1階にしては違和感がありすぎる
場所だと気づいたのは、数歩歩いた
時だった。



真っ直ぐ歩いていると、
右か左か真っ直ぐに進む
ルートに別れた。



(右にしよっと。)



適当に右に曲がって歩いていると、
またもやルートが別れた。

次に左へ行くと、またルートが別れる。




ちょっと待って…。
お部屋とか1つもあらわれないんだけど。

ここ迷路みたい…。
てか、暗くてよく分からん…。
怖いなぁ…。



と思いつつも進んじゃうのが
今藤雪菜さっっ!!!!




真っ直ぐ歩いていると、1つの
部屋を見つけた。



(おっ。お部屋発見!!)



入ってみると、そこは光が1つも
差し込まない真っ暗な部屋で。

正直怖いと思った。
幽霊が出そうで怖かった。

部屋の真ん中辺りまで来たとき
いきなり開けていた扉がしまってしまった。





「…ちょっ!!…どうなってんの?!
ねぇ…!!…何で?!…何で開かないの?!」





勝手に閉まった扉は、もう開かなくて。

光の差し込まない部屋は
本当に怖かった。

もう、温かい人に囲まれる
良さを知っちゃったから、
1人ぼっちは怖いよ…。





「…うっ…ひっく…うっ…誰かぁ…
誰かぁ…たす…うっ…けてぇ…。」





暗くて、まわりに何があるのか
全然分かんない。

怖いよ…。

助けて、たっくん…。
ママ…パパァ…。




皆はまだ寝てるんだと思うと
余計に悲しくて、涙が止まらなかった。

私の嗚咽がこだまする。




(こだましてる…?
……ここって地下?)




そう分かったとき、一気に
恐怖が募った。


どうしよう…幽霊が出たら…。


長い髪の毛が天井から
たれてきて…。
…わぁぁん、想像するだけ
でも怖いよぉ…。


すると、何やら、首にさらさら
したものが一瞬当たった。




「…何っ?!…何なの?!
…なんだよ、自分の髪の毛か…。」




初めて、自分の髪の毛
怖いと思ったよ…。

幽霊かと思ったら自分かよぉ…。




そう思ったとき。




扉が「バンッッッ!!!!!!!!」という
大きな音をたてたかと思うと、
その扉が前へと倒れてきた。




「いやぁぁぁぁ!!!!
…来ないでっ!!来ないでぇ!!!!
幽霊何てあっち行けぇ!!!」





私は必死で叫んだ。
こだまする自分の声にも
怯えながら、必死に得体の知れない
物体に叫びまくった。


けど、その得体の知れない物体が
何と日本語を喋ったのだ。





「おい、俺を勝手に死なせるな。
…隣にいねぇと思ったら、迷った
のかよ。このドジ。どんだけ心配
したと思ってんだ。

俺から離れないって言ったの誰だよ。
ったく。部屋戻んぞ、雪菜。」



「この声…たっくん?!
…うっ…うぇっ…うぇぇぇん!!…
たっくん…たっくん…怖かったぁ…。」



「あー。もう泣くなって、よしよし。」




暗くて、何も見えないけど、
確かにたっくんの存在は感じ取れた。

私を抱き締めてくれるたっくんは
私をヒョイっとお姫様抱っこして
歩き出した。




だんだんと、光が私の目に
届いてくる。


完全に、地下から地上へ上がった時、
ずっと真っ暗な場所にいたせいか
いつもより眩しく感じた。




「…っ…ひっく…うっ…たっくん…。」


「お前、俺がいないと何も
出来ねぇのな。もう泣くなって。
俺ちゃんといるから。な?」



「…うっ…う、…ん…。」





たっくんは安心の溜め息を
はいて、私を抱いて部屋へと戻った。




たっくんは、ベッドに腰かけて
膝の上に私を乗せた。


私が泣き止んだ頃、




「落ち着いた?」




たっくんが優しく声をかけてくれた
けど、正直落ち着かない。

だって、お膝の上だもん…。

怖いとかそう言うのじゃなくて、
…ドキドキするから。





「…全然落ち着かない。
落ち着かなすぎて私、気絶しそう。」


「何でだよっ?!……あぁ。へぇ。そう。
…雪ちゃんさぁ?ドキドキしてんの?」






はぁ…。
何でこう言う時に限って
より勘が良くなっちゃうかなぁ。


そう言うの分かってても
口に出さなくていいんだって…。





「雪ちゃん俺にドキドキしてんでしょ?」


「うるさい金髪。殴るよ。」





たっくんにこんな事言うのは
涙が出るほど(出てない)辛いけど
これしか方法ないからなぁ。




「雪ちゃんひど。俺泣いちゃうよ。
俺雪ちゃんの彼氏なのに。」


「だからうるさい。」


「でも殴ったら雪ちゃんのこと
襲うからね。俺襲っちゃうからねっ?!」




うわ。
笑いが堪えきれないよっ。

これ絶対たっくんも楽しんでるよね。

本気だったら雪菜って言うもん。
雪ちゃんって言ってるし。





「雪菜…マジで襲うけど?」


「あははっどうせ襲えないでしょ?
別にいいしっ………」




(あっれー?今雪菜って言ったよね?
…え、絶対言ったよね?!
やばっ…………逃げよう。)





「あは、たっくん、私
ママとパパの所に行ってくる…ね。」





と、声を震わせながら、私は
すぐさま走って、ドアのぶに
手をかけた。が…、





「こら。」と後ろからたっくんが
覆い被さってきて、ドアのぶに
かける私の手を阻止した。




「雪菜さ、俺から逃げら
れるとでも思ったわけ?」


「はい。すいません。
もう絶対こんな真似は致しません。」


「うん、そうだよな。」


「はい。」




ヤバイヤバイ。
後ろからはヤバイって…!!

私、違う意味も含めて
心拍数上がってるよ…!!



てか、皆まだ寝てるのに
朝っぱらから私たちは
なんちゅー大迷惑なことを…!!

確かこの下には、ママとパパが
寝ている部屋なはず…。


ドタバタしたら超大迷惑じゃん…!!




「雪菜……遊ぼっか。」




ひぃ…!!!!
ヤバイ…私はやられる…。
やられてしまう…。

たっくん…地味に怖いんだよなぁ。

あの黒い微笑みというか…。










***




「痛いよ…!!」

「我慢しろって。」

「痛っ!!もっと優しくしてって…!!」

「これに優しさ何てねぇんだよ。
お前だってさっき強かったじゃねぇか。」





私たちは今、久し振りにトランプ
で遊んでいる。


たっくんは、すごく強くて、
私は、負けてばっか。

勝ったのは、たったの1度

勝者は敗者に手のこうにしっぺ。





「あぁ!!!!…いったー!!!!!!
痛い痛い!!!!ほら見てたっくん!!
もう真っ赤っかだよ?!」


「ホントだ。負ける雪菜が悪い。」


「手加減してよ…。」


「だからしてるって。」





私の手はもう真っ赤。

たっくん強すぎだよ。
負けず嫌いの金髪ヤロー。



勝負はババ抜き。



次の1枚で負けか勝ちかが決まる。

たっくんのカードを引くと
何と数字が出た。

♡の6。



(嘘…。私の勝ち…?!)



「や、…や…やったー!!!!!!」


「はい。俺の負け、しっぺな。」


「うんっ!!」





今までの分を300倍返しでしっぺする!!

だから、ちょっとだけ技いれてもいいよね?

たかがしっぺだと思うだろうけど、
結構熱くなれる勝負!!!!



私は、神経統一して構えた。




「おいおい、雪ちゃん?!
俺の手に技かけたらダメだからね?!」





たっくんの言葉はもちろん無視。

まだ…まだ…まだ…。



今だと思い、足を思いきり
手めがけて降り下ろした時。


たっくんの手に自分の足が
当たった感覚が一向にこない。



よく見ると、




「雪菜…彼氏に向かって技とは…。
あっぶねぇ…。てか遅いな。」



「ちょっ…たっくん…?!」




普通、この技を受ければ骨が
折れてしまうものをたっくんは
平気ですんなりと手で受け止めていた。





「てか遅いって…たっくんがただ
強いだけでしょ?!…私の300倍返しの
しっぺをどうしてくれるんだぁ!!」



「あ?…てかもはやこれしっぺ
じゃなくなってるし。」



「うっ…まぁそうだけどぉ…
しっぺ!!しっぺ!!…たっくんしっかり
当たってくれないと…。」



「いや。当たったら俺の手折れるから。
折れたら雪菜の事守れねぇじゃん。」





何かごもっともな事言われた気がして
言葉が出てきませんよね。はい。

私が悪ぅございました。
すいませんでした。

わざと声には出さなかったけど
心の中で一応謝っといた。




「雪ちゃん?いい?技は…、」


「わっ?!」


「こうやってかけねぇと。」




たっくんは、私に覆い被さって
きて、私の自由を奪った。


たっくんは意地悪く笑いながら
私にプチお説教。




「だから、雪菜はおせぇんだよ。
もっと体の力抜いて足回さねぇと
ダメなの。分かる?」


「…うん…はい。」


「ほんとにわかってんの?」


「…うん。分かってる。」





なぜか技についてのプチお説教を
受けた私。


たっくんがやっと私から
離れたかと思うと、いきなり
たっくんが私に口付けをした。




「ねぇ雪菜知ってた?
俺んとこの使用人さ、雪菜見ると
ずっと雪菜のこと目で追ってんだぜ?」


「え…」


「その光景を目の当たりにして、
そんでも我慢してさ。
…我慢してる俺の気持ち分かる?」




意外な事実をたっくんに
告げられ、驚きを隠せなかった。


たっくんが私の名前を囁いたとき、
鎖骨らへんに痛みが走った。



「マーキング。」



たっくんが言ったマーキング
という言葉で私は察した。


“キスマーク”


私に目をつける男性が多いからって
事で、たっくんの印を付けたわけだ。




「ごめんね…たっくん。
…私だって、たっくんいろんな女の人
に見られてても我慢したんだからっ。」


「お前は分かりやすすぎ。昨日だって
妬いて俺の手強く握ってきたじゃん?」





確かに…。
すぐ表に出しちゃうから。
…て思えば、本当にたっくんって
我慢してたんだなって思う。


平然を装うのってたっくん
上手だよね…。
たまに、下手くそな時あるけど。




「よしっ!!トランプの続きやるか!!」


「えっ?!」


「次は、敗者が勝者にキスな。」




うっわー。
たっくんの黒い笑みこっわ。

絶対私負けんじゃん…。
たっくん絶対それ狙ってるよ。

大丈夫。
私だって本気出せば強いんだから!!!!
たっくん何かに負けないからね!!!!