たっくんのお家に着くと、私は
驚きを隠せなかった。


だって、すごく大きいから、私のお家
より大きいから。



1番有名な財閥なだけある。



「雪菜…行くぞ。」


「うん、」



たっくんのお家へ入ると、緊張で
鼓動が速くなる。

こんなに緊張するのは初めて。

奥様がいる部屋は、2階の1番奥
にあるみたい。



その部屋に近づくに連れて、
緊張が増す。

たっくんが部屋の扉を開けると
そこには、




「パパ?!…ママ?!…」



「「雪菜?!」」



「お母様、お父様、雪菜は
俺の事を思い出したんです。」



「そうか…。良かった…。」



ママは私に飛び付いてきた。
良かった。良かった。って
ずっと囁いて、私を撫でてくれる。


嬉しいけど、それよりも
何で、パパとママがここに
いるのかが疑問…。


たっくんもそれが不思議で
たまらないみたいで。


それに…鈴さんも…いるから。




「雪菜…これには訳が…。」


「え?」




心配そうな顔をするママは

奥様と社長さんの方を見た。




「雪菜ちゃん…。」


「おい、くそババァ。お前なんかが
気安く雪菜の名前呼んでいいと
思ってんのか?あ?」




この感じからすると、奥様とたっくん
との問題が原因かもしれない。

私の予測があっていれば、
きっと当たり。





「拓也。聞きなさい。
お母さんの話を聞いてちょうだい。」



「お前の話なんか聞きたくねぇ。

俺が、小さい頃からどんだけ辛い思い
したか分かってんのか?


父さんと母さんがまだ離婚してない時、
俺それまで、すげぇ幸せだと思ってた。
正直、自慢の親だったよ。


母さんは今と違って優しくて
笑顔も多くて、父さんは俺とすげぇ
遊んでくれて、優しくて。


けど、お前のせいで、俺は…。
お前が浮気何てしなけりゃぁ、俺は
普通に幸せに暮らせてた!!!!


離婚して、父さんと別れて…。

離婚してすぐ、浮気したそこにいる男
と結婚した!!!!お前は!!

父さんの事をどうでもいいと言われた
気がしたよ。
俺も、必要ない、どうでもいいって
言われてるような気がした。

それから、お前が、俺は
大嫌いになった…!!!!

正直恨んだよ。
何でこの家族にうまれてきたんだろって…。」





たっくんの声はすごく悲しい
声をしていて。

こんなたっくん初めてみた。

そんな事があったなんて…。
たっくんは小さい頃からそんなに
辛い思いをしてきたんだ思うと
胸が痛んだ。





「拓也…。ごめんなさい…。
この人と結婚してから、拓也の態度が
変わってしまって…。


そこからなの…。
私は、今までどうやって拓也に
接してきたか、分からなくなって…。

無理矢理にでも後継者にしようって
力づくで、なってもらうしかないって
それしか方法が見つからなかった。


いつも、毎日何度も悩んだわ。
幼い頃のあの拓也にはどうしたら
戻ってくれるのかって…。


本当にごめんなさい…。」





奥様は泣いていた。
その涙は止めどなくこぼれ落ちて、
床へと染み込んでいく。




「ママ…これはどういう事…?」




「あのね…雪菜…。雪菜たちが
幼い頃から私たちはとても仲がよかった
の。

そこで、拓也くんのお母様がママたちに
何とか、拓也くんを後継者にしてほしい
って相談してきて…。

だから、仲良し同士、協力してあげる
ことになったの。


それが、わざと鈴さんを婚約者にして
それをよく思わない拓也くんに
鈴さんと婚約破棄する代わりに
後継者になるよう仕向けるのが作戦
だったわけなの。


……ごめんなさいね。」





それを聞いた、私とたっくんは
驚きを隠せなかった。


相変わらず、奥様は泣きながら
謝ってるし。
社長さんは気まずそうにしているし。


たっくんは…何かを
決意してるような感じにも見えた。



するとたっくんは、




「…もういい。分かったから。
母さんの気持ち分かったから。
その男も、俺の新しい父さんとして
認める。後継者にもなる。


…だから、鈴との婚約は破棄してくれ。」




「…たっくん…」




たっくんは私を見ると、私の肩を
抱いて、奥様に言った。




「俺は、雪菜じゃねぇとダメなんだ。」



「…拓也。…ごめんなさいね…。
許してくれて…ありがとう…。」



「おう。母さんは俺の自慢の親だ。」




何とか…たっくんと奥様、和解
出来たみたい。

鈴さんは、たっくんと奥様が和解
出来て嬉しそう。
笑顔だけど、どこか悲しげで。




「拓也。騙しててごめんね。」


「鈴…。」


「でもね、これだけは覚えておいて
ほしい。…拓也が好きなのは
本当だった。本当に結婚出来たら
どんなに嬉しいかってずっと思ってた。
……ごめんね。」




そう言った鈴さんは、皆に一礼すると
この部屋から出ていった。





「何か一気に疲れた…。雪菜ー。」


「たっくん…?!…あーもうよしよし。」




甘えてくるたっくんが
少し可愛かった。

辛かったんだよね。
ずっと許したくても許せなくて。
辛かったよね…。





「…雪菜ちゃんもごめんね。
辛い思いさせちゃって…。
私のせいで…事故にまで…。」



「奥様…?!…謝らないでください。
もう過去の事ですし、こうして
私はちゃんと生きてますし!!!!」



「雪菜ちゃんは、幼い頃と
変わらず、優しいわね。…拓也とは
結婚するんだから、そんなお堅く
ならないでくれるかしら。」



「えっ!!…じゃぁ、お母様…」




あれぇ。
どう呼んだら良いのかな。

お堅くならないでって言われてもなぁ。

お母様しか思いつかないよ…。





「おい、母さん。雪菜のこと
いじるなよ。」



「あら、ヤキモチ?」



「うるせー。」




たっくんはそっぽ向いてまた
私をぎゅっと抱き締めてきた。

離れないよって言われてる
ようで、嬉しかった。




「今日は皆さん、どうぞ泊まって
いってください。せめてものお詫びに。」




お母様の提案にお父様もママもパパも
たっくんも皆賛成し、泊まることに
なった。


まさか、泊まる展開になるなんて
思っても見なかったから。


たっくんの家に初めて来て、
初めて泊まることになる何て…、
初めての事だらけで…。




「母さん、俺、風呂入って
くるわ。雪菜と。」


「あら、そうなの?分かったわ。」




えっ?!
おいぃぃ!!!!

お母様もそこ突っ込む
所だよぉっ?!

普通一緒に入るかボケぇ!!!!





「おい、雪菜。こっち来いよ。」


「えっ!!…えと…あの…」


「襲われてぇの?俺、雪ちゃん不足。」




襲われるという言葉を
出されては、従わないと
まずい気が…。


私は、しぶしぶたっくん
についていった。







***




体にタオルを巻いて、中へ入ると
お風呂まですごく広くて、ここは
何もかもが広い。


ただでさえも、自分の家でも
迷うのに、たっくんの家は
迷うって言葉じゃ済まされない
くらい広い。



髪の毛も体も洗い終わり、
一緒にたっくんと、湯へ浸かる。


少し、爽やかな柑橘系の香りがする
湯で、とても気持ちが良かった。





「でも、俺これで良かったと思う。
いつかは、母さんのこと許さなきゃって
父さんのこと認めなきゃって
思ってたんだ。

雪菜が帰りにあぁいってくれなかった
らさ、俺、ずっと和解出来ずに
いたかもしんねぇんだ。

サンキュな。」



「たっくん…。うんっ。」




何か、何もかもうまく
いった感じがする。

良かった。

これで、たっくんと一緒に
いられるんだ。

嬉しいってもんじゃないよ。







お風呂から上がり、たっくんに
髪の毛を乾かしてもらっているとき、


たっくん家のメイドさんの声がした。



「お嬢様、坊っちゃま。
お食事の用意が出来ました。」



「サンキュな。すぐ行くわ。」




たっくんがそう言うと、メイドは
どこかへ行ってしまった。


乾かし終わると、たっくんと一緒に
私は、1階へと降りた。







食事はとても美味しく、さすが
一流シェフだなと思った。


皆とは、私たちの幼い頃の思い出を
語りあった。


すごく楽しくて、このひととき
が終わらないでほしいとも思った。



食事も終わり、皆寝静まった頃。
まだ私とたっくんは起きていた。



一緒に寝ながら、たっくんから貰った
あのネックレスについて話していた。


たっくんは、新しいのあげるって
言うけど、私、これだけは、壊れても
ずっと持っていたいな。



だって、このネックレスは
本当に大事だから。


ずっと、ずっと…
大切にしてたい…。






私は、ネックレスを握り締めて
眠りについた。