屋上を出る際に桑田君
に言われた、



『雪菜ちゃんが本当に愛したいって
人を見つけたら、俺は引くよ。
けど!!それまでは…彼氏だからね!!』




って言葉。



思わず、そうしたいならそうすればいい
何て言っちゃったけど…。

自分から桑田君を傷付けて
どうすんの…。


桑田君は優しいから。
それが、逆に辛い。

優しい大切な友達を傷付つ
けるのは凄く最低だよね…。





(はぁ…、授業受ける気
なくなっちゃった…。帰ろっかな…?)





教室へ行くと、由香と皐月が
駆け寄ってきた。


1時限目の授業に出ないで
桑田君と何をしてたのか聞かれた。


さすがにあの事は言えないから、
一緒に青空見てたって言っといたけど…


2人に黙っとくのは辛いなぁ…。





「2人ともごめん…。もう、帰る…。
高ちゃんに言っといてくれる?」



「えっ。雪菜具合悪いの?大丈夫?」



「うん…。」





心配してくれる2人。
けど、本当の事を言えないまま
普通に話したりするのは気が引ける。


今は、2人にどんな顔していいか
分かんない。




(頭ん中ぐちゃぐちゃ…。)




心配してくれる2人を背に私は
教室を出て行った。






階段を降りていると、運悪く
高ちゃんとバッタリ遭遇した。




「ん?今藤どした?」




私は、高ちゃんの質問を
華麗にスルーし、階段を
スムーズに降りた。





が。






お決まりのパターンで、私は襟を
掴まれ、会議室へと強制連行された。







***




「お前どうしたんだ?元気
ねぇじゃねぇかよ。」




「高ちゃんは黙ってて。」




「おい。何だと。今藤のくせに。」




「今藤のくせにって何っ!?くせにって!!」






(はぁ…)



でも、少し元気出たかも…。






「まぁ、何があったか知らないが、
辛くても笑顔でいれば
どーってことなるってもんよ!!!!
…お前は笑ってた方が1番いい。」





たまには良いこと言うじゃんね。
高ちゃんからこんなまともな事
言われたの初めてかも。


それが、嬉しくて、くすぐったくて
私は思わず笑った。





「やっと笑ったじゃねぇか。
笑う門には福来たるだっ!!!!
はーっはっはっはっ!!!!」



「ちょっと!!良いムードがぶち壊し!!
高ちゃんも“たまには”良いこと
言うなって思ってたのにっ!!!!」




「おいっ。俺“教師”!!、一応教師
何ですけどっっ!!!!!!…てかたまにはって
何だ!!そこ強調するなよっ!!!!」





高ちゃんとのこの言い合い、
悪くないよね。
何か元気出るって言うか…。


自然と笑顔になれるんだ。





「所で、お前これからどーすんの?」



「どーするって、帰る。」



「何だとっ?!授業受けてけ!!!!
…ほ~ら可愛い子猫ちゃ~ん
500円あげるよ~。」





この選択肢は2つ。


今、高ちゃんの持ってる500円を
「わ~い♪ありがとー♪」って言って
もらい、もらった瞬間に逃げる
一石二鳥のやり方か。



それとも、華麗にスルーするか
のどちらか。





私の選択は……、






「……バイバイ高ちゃん。」




華麗にスルーする選択!!




「おいっ。待てこらっ。」




そして走る!!


走って走って走りまくる!!!!



無事に下駄箱まで到着した私は、
靴を履き替え校舎を出た。





(拓也さんに電話しよ。
迎えに来てもらわなきゃ。)





私は、スマホを手に取り拓也さんに
電話をかけた。




(あれ…?てか、何で私は拓也さん
の電話番号知ってるの?)




知らない間に登録されていた電話番号。

知らないくせに、電話しよ何て
まるで、知ってたみたいに…。

私の感覚は何かをしっかりと
覚えてる。頭がそれについて
これないだけ…?




(あぁ、考えても無駄無駄っ!!)




すると電話口から拓也さん
の声が聞こえた。




「雪菜か?どした?」



「やっぱり学校休む。
迎えに来て、早く。」



「どした?具合悪い?」





電話口だけど、その声が直接
耳に届くとくすぐったい…。

優しく、少し甘めに話しかけられると
心臓がうるさいくらいに高鳴る。

電話口なのに、自然と顔が
熱くなってくる…。





「おい、雪菜?」


「…く…がい…」


「わりぃ。全然聞こえねぇ。
もっかい言ってくんね?」


「早く…お願い…
迎えに来てよ…たっくん…。」


「?!…待ってろすぐ行く…!!」





電話は拓也さんに無理矢理
切られちゃったけど、迎えに来て
くれるって言ってた。


待ってよ。



それより、さっき咄嗟にたっくん
何て呼んじゃったな…。



拓也さんと話してる時、急に
ある映像が頭に入り込んできたの。



屋上で複数の男子に囲まれてる私が居
て、私は心の中でたっくんって
男の子を呼んでる。

私が何かをいいかけたとき、
凄い勢いで屋上の扉が開いたんだ。

そこには、たっくんって子がいて
私を守ってくれた。




顔何か分からないのに、その男の子の
名前とかちゃんと知ってて、私は
その人と何か親しげで…。




そのたっくんって子の雰囲気に
拓也さんは似ているの。


だから、拓也さんとその人を
リンクさせちゃう。



(一体、婚約を交わしたそのたっくん
って人はどこに居るのかな…?)





てか、寒いな…。
ちょっとベンチに座ろっと。


ベンチに座ると凄く冷たくて
鳥肌が止まらなかった。




(うー、我慢我慢。)




冷たいのを我慢し私は専用車を待った。



(ちょいちょい流れ込んでくる
あの映像は何なんだろう…。)



きっと、記憶の1部だと思うけど。
私は、そんな記憶知らない…けど
懐かしく思う。



とにかく、たっくんって人の
正体を知りたい…。

どうやったら…





急の睡魔にまぶたが開かなくなり、
私は、遠くなる意識のなか
車の音をかすかに聞いた。