信号…赤と青見間違えてたんだ…。



横を見ると、トラックが
スピードが遅くなることなく
私の方へ向かってくる。




(どうしよう…足…動かない…恐い。)




どんどんトラックが近付いてくる。




たっくんが…由香たちが、
走って…くる。



私の名前を呼びながら、走ってくる。






(私…バカだな…。)






本当はね。分かってたんだ。


ちゃんと見てたんだから。


たっくんは、鈴さんと
キス何かしてなかった。

ただされそうになっていただけで。




あの時…鈴さんの唇がたっくんの
唇に当たりそうになったときね、
たっくん…左手で、自分の唇
押さえてたんだ…。




分かってた。


分かってたんだよ…私…。



たっくんの言ってた、悲しませたりとか
泣かせたりとかってこう言うこと
も含まれてるんだよね…?



けど、やっぱり私。
ヤキモチ妬いちゃって…。



たっくんといる鈴さんが
正直嫌だったんだよ。



鈴さんのこと好きじゃないって
分かってても、やっぱり苦しくて…。



分かってても、受けるショックは
とても大きいの…。






そんな事を思っている間にも
トラックはもう私のすぐ傍まで
近付いていて。





(何だろ…。スローモーションに…。)





今、私の見ている光景は、
全てスローモーションで…。


走ってくるトラックも、
たっくんと由香たちも、全部
スローモーションに見える…。





「あ…あ、ぁ…たす…け、てぇ…」




私の声は、掠れていて、
トラックが鳴らすクラクションに
虚しくかき消される。






(私…死ぬのかな…。
…死ぬんだったら、最期に…、)






私は、たっくんを見て、




「たっくん!!!!








……大好きだよ。」








そう言葉を発した瞬間、私は
トラックに体全体を強打し、
道路に転がる。




まだ、うっすら意識のある私は、
自分の頭が地面に打ち付けられる
「ゴツッ。」という鈍い音を
しっかり聞いた。




精一杯開けた目に広がった光景は、
私を避けようとガードレールに
ぶつかったトラック。


濃い赤色の液体が地面いっぱいに
どんどん広がっていく。




追い付いた由香たちとたっくんが見える。




由香たちは、泣き崩れて…



たっくん…は、私に近寄って。





「ゆ、雪菜…。おい、雪菜…!!」




(あ、たっくん…。
…苦しいよ、痛い…。)




「雪菜…。ごめん…。悪かった…。」




(何で、謝るの…?悪いのは
私なのに…。謝らないで…?

ねぇ、たっくん…。もう1度
私の名前を呼んでほしいな…。)





あ…。

苦しい…。



体全体が痛い…。



ごめんね、たっくん…。
自業自得だよね…ごめんね…。






私…死んじゃうのかな…。
視界がぼやぼやするし、たっくんの
私を呼ぶ声とか由香たちの泣き叫ぶ
声がどんどん小さくなってくる…んだ。






「は…ぁ…た…っ…く……」






たっくんの名前をしっかり
呼べないまま、私の意識は
そこで途絶えた。