飲みかけのココアの入った缶が
手から滑り落ちる。
カラン。コロン。
と、アルミ缶が地面を転がる
音が、静寂に響き渡る。
その音は、よく響き、とても目立った。
そのおかげか、たっくんと鈴さんは
その音が響いた瞬間すぐに私たちの
方を見た。
「雪菜!!!!」
たっくんが私の名前を呼ぶ。
私の名前を呼びながら、こちらへ…
走ってくる。
いつもなら、このまま抱き締められてる
んだけど、今回は違った。
(逃げなきゃ。)
私は、たっくんから逃げるように
後ろを向いて走った。
由香たちの私を呼ぶ声にも
一切振り返らず、ただ走った。
走って、走って…。
涙が止まらない。
そんなのはどうでも良くって…。
(走れ…走れ…走れ…走るんだ…!!)
前には横断歩道。
信号は運よく青信号で。
後ろを振り返れば、追いかける
たっくんと由香たち。
(あの横断歩道を渡れば、
たっくんから逃げられる。早く…!!)
あともうちょっと。
あと数メートル…。
早く…!!
横断歩道をやっと走りながら
渡った時。
「「雪菜!!危ない…!!!!」」
追いかける、たっくんと由香たちの
叫び声に近い声が聞こえた。
(あ…しまった…。)



