……―――朝日が一気に視界
に入り込む。





(朝…?)




冬に変わりつつある秋の季節。


やっぱり、肌寒くて。





横を見ると、そこには
たっくんが寝ていた。



(昨日…あのまま寝ちゃったんだ…)



状況を理解した時、私は
お風呂に入っていない事に
気がついた。



時計を見ると、何と5時。


初めて5時に起きた私。

奇跡の5時を繰り出した私は、
お風呂に入ろうと思い、たっくんを
起こさぬよう、ベッドから
退出すると、誰かに手を掴まれた。




「ひゃっっ?!」




ビックリして、体が固まる。
誰かにって言っても、たっくん
だろうけど……きっと。





「雪菜、どこ行くの?」



「どこって…えと…お風呂…に…。」





寝起きのたっくんは、声が掠れていて
寝返りとかで、少し乱れた服が妙に
色気を感じさせた。




「風呂か…。入るんだ?」




「うん。昨日このまま寝ちゃったから
お風呂入ってなくて。」





「そうだな。今5時か…。雪菜、
………一緒に入る?」







はい?


たっくん、今一緒に入る?って…。



私の顔は、一気に赤面、頭は沸騰状態。





たっくんは、意地悪く笑いながら
私を見ていて。



ちょっと一緒に入りたいなとか
変な欲を出しちゃってる自分を
叱りながら、私は即否定した。





「ははっ。冗談だって。…でも一緒に
入りたいなとか少しは思っただろ?」




「…そっ…そんな事っ…!」




「んじゃ、雪菜2階使え。俺1階使う
から。」





そう入る場所を仕切ったたっくんは、
私の頭にポフッと手を置いて、部屋から
出ていった。




部屋から出ていく際、たっくんは
私を見て、「さっき言ったやつ。
あれ、結構本気だった。」と、
意地悪く笑いながら、言った。




(…たっくんって…ほんとズルいよ…)




そんな事言ったら、一緒に入れば
良かった何て…変に後悔しちゃうじゃん。







「……たっくんの…意地悪。」










***




お風呂から上がり、制服に着替えて
いるとき、首に付けている、
たっくんから貰ったネックレスに
目をやった。



それを見たとき、たっくんの
婚約者が頭に浮かんだ。




(綺麗な、人だったな…。)




鈴さんにたっくんが
なびいちゃったら…ヤダな。





こんなこと考えてたらだめだよね。




「たっくんの事、信じなきゃっ!!」







乾かした髪を手入れしようと、
自分の部屋へと戻ると、たっくんがいた。





「雪菜。ちょっと時間ねぇから、
髪の毛は俺がやる。ここ座れ。」




「時間って…。運転手さんは?」




「そいつが、今日風邪で休んでんだ。
しかも車の鍵はあいつがもってんだよ。

んだから、歩きっつー手段しかねぇんだよな。」








何て事だ。

でも歩きってことは、たっくんと
一緒に校門まで登校…。





めっちゃ良いじゃん。
デートみたい…。




顔がにやけるのをどうにか
抑え、椅子に座る。





私の髪の毛に手を添えて
ブラッシングしてくれるたっくん。


とても優しくて、安心出来た。

たまに、首に当たる、自分の
髪の毛やたっくんの指が、少し
くすぐったい。




妙に、ドキドキする雰囲気を
作り上げる今の状況を、たっくん
はどう思っているのかな…?



今の私みたいに、ドキドキ
してるのかな…?