「何で…今日に限って手伝い何て…。
これじゃぁ、たっくんのプレゼントが…」



「何か言ったか?」



「何も言ってない。」





ボソッと呟いた事が
危うく聞かれそうになっちゃった。



危なかった…。



ホッと胸を撫で下ろす。





2時間くらい高ちゃんの
手伝いをした頃私はやっと
解放された。



(あーぁ。これじゃ、たっくんの
プレゼント買えないよ…。)




しょんぼりしながら、私は
下駄箱へ向かう。




専用車のある方へ行くと
少し不機嫌そうなたっくんが
車に寄りかかっていた。





「あ…たっくん…遅くなってごめん。」




話しかけづらいオーラを放っている
たっくんがちょっと怖かった。




「雪菜。遅い。」



「ごめん!!高ちゃんのお仕事
手伝ってたの!!」



「何時間も待ってる側は、何かあった
んじゃねぇかって心配する。

雪菜に何も起こってないなら
それでいい。帰るぞ。」



「うん。」






たっくん…。
心配してくれてたんだ…。


今日は、たっくんの誕生日なのに
私はプレゼントも何も用意してない…。



その事に、私はチクリと胸が傷んだ。





専用車に乗っている時も
私は落ち着かなくて、ずっと
そわそわしていた。






***




家につくと、メイドさん達が
出迎えてくれた。



私は、部屋着に着替えて、すぐに
夕食を食べた。



自分の部屋で勉強している時、
たっくんが部屋に入ってきた。



たっくんを見てるとプレゼント
を渡せない気持ちでいっぱいに
なって、胸がズキズキと傷む。






「ねぇ、たっくん…。
今日は、たっくんの誕生日だね…。」



「あぁ。何?プレゼントとかくれんの?」





笑い混じりにそう言ったたっくん
に余計に胸が傷んだ。




「それがね。高ちゃんの仕事を
手伝ってたら時間がなくなっちゃって
…っ…それでっ…うっ…たっくんの…
プレゼント…っ…買えなくてっ…!!」





たっくんは何も言わない。

きっと呆れてるんだ…。

私ってば情けない…。






すると、何か温かいものに
包まれる感じがした。


目を開けると、そのものの正体は
たっくんだった。




(たっくんに…抱き締められてる。)





「なに泣いてんの、雪菜。」




頭上から聞こえるその声は
とても優しかった。


止まらない涙を押さえてくれるかの
ように頭を撫でてくれる優しい手。





私は、気がつけば
泣き止んでいて、たっくんを
抱き締め返していた。




「プレゼント何てもう貰ってる。」


「え…?」





私、いつプレゼント何か
渡したのかな…?





「雪菜…。雪菜が俺のプレゼント。」




確か、そんなような事言ってたような。




『雪菜が欲しい』




確か、そんな風に言ってたっけ?




「雪菜…。」




名前を呼ばれ、ドキドキする心臓。

鳴り止まない心臓はどんどん
鼓動を速くする。





重なる唇からは、たくさんの
感情が溢れだした。



好きって気持ちとかごめんねって
気持ちとか…、



私からどんどん溢れていく
いろんな感情。




今日のキスは、特別な日だけあって
いつもより長い。





「だから、何泣いてんの。」





キスをし終わるとたっくんは
私の顔に手を添えていて。

そっと流れる涙を拭いてくれた。







「雪菜。…ありがとな。」



そう言って、私を再び
たっくんは抱き締めた。





「誕生日おめでと、たっくん…。」




誕生日プレゼントはなぜか
私だったけど、たっくんに
とっては、最高の誕生日だったみたい。




これは…成功…かな。






たっくんは、私が眠りに
つくまで、ずっと傍にいてくれた。




本当は、その逆をしたかったけど、
たっくんの要望でしたので仕方なく…。




でも、まぁ、たっくんが
喜んでくれて何よりかな。