「あぁ。」




「で、でもっっ!!たっくんはそんな
口調じゃないし、ピ、ピアスなんか
もしてないしっ!!

あなた、嘘ついてるんじゃないのっ?!」




「それは、“昔”の俺。」






昔の俺…。


じゃぁ、もうたっくんはいないの…?






荒澤君を見ると、やっぱり
どこかたっくんに似ていて、



「あ、荒澤君は、何で荒澤って
名前なの?たっくんは五十嵐だったよ?」




それを聞くと、さっきまでの
意地悪な笑顔が一瞬にして消えた。




(聞いちゃ、ダメだったかな…?)






荒澤君は、スタスタと私の
方へ歩み寄ってくる。

私は、怒られるかと思い
咄嗟に目をつぶっていた。




けど、待っていたものは、





暖かいものに包み込ま
れるような感覚だった。





目を開けると、荒澤君は
私を抱き締めていて…、




「ずっと、会いたかった。雪菜。」





(あ…。)





私の目からは、涙が
止めどなくこぼれ落ちて。




(私は、何を忘れていたんだろう。)




ずっと、忘れていた過去が
徐々に思い出されていく。







……―――――