好きなのに。 ”桜井”と呼ばれただけで、本当は踊りだしたいくらい嬉しいのに。 ずっと、見ていたいのに。 ずっと、見ていて欲しいのに。 ずっと、話していたいのに。 どうしていつも私は…――― 「そんな、冷たく言わなくてもよくね?」 「そんなつもり、ないけど」 気持ちとは裏腹に、私の口から出る言葉は冷たい。 「あっそ…。そんなに俺のこと嫌いなんだ?」 苡槻が、ほんの少しだけ悲しそうな顔をした。 「……きらい」 そんな私の言葉で、目の前の端正な顔は、歪んだ。