Name ~ 名前なんていらない ~








憎い。


そう言われてから、2週間がたった。





昼休み。



誰もいない、音楽室の前の廊下。


翼咲が学校を休んだ。


だから、私は1人でお昼を食べようと思い、人気のない5階の特別塔に来ていた。





誰もいないことを、確認した。




…はずだった。






音楽室に入ろうとした時、あいつに呼びとめられた。




「さくらーい」




――いつだってそうだ。



この声が、私を一喜一憂させる。





「何か…用?……苡槻」




私は、冷たさたっぷりで言葉を放った。




好きだと思う反面、いざ本人を目の前にすると、「怖い」と思ってしまう。