「……また、あいつと関わらなきゃいけないとか、最悪」
苡槻が、こそっと私に言った。
本当は、苡槻の事が怖くて、話したくなかった。
でも、学校では優しい苡槻だったから、少し安心した。
「仲、良かったじゃん」
私も小さな声で返す。
「…きらいだったし。つーか…――」
「――こら!夏川、桜井!私語は慎みなさい!!」
あー…。忘れてた。
今、数学の授業中なんだっけ。
「…うぇーい」
「…あーい」
私と苡槻が少しの沈黙の後、同時に返事をすると笑いが起こった。
「お前らほんと仲いいな…。成績も仲良く一緒にガタ落ちかなー…?」
にんまりと先生が笑ったから、私は授業に集中することにした。

