俺は高校時代モデルだった。
きっかけは、現役の王子特集号だった。


でも、断った。
何処で調べたのか判らないが、確かに俺にはそのような血も一部には流れてはいる。
らしいけどね。


徳川家の姫を贈られた藩主の子孫なんだって。
だから俺の体の中には、徳川と平家の血が混ざっている。


でも曾祖父は平家の血を重んじた。
だから次男が誕生したらその子に、行方不明の平家の姫を探し出し結婚させることを遺言したのだ。


だから小さい時からずっとそう言われ続けていたのだった。




 それでもモデルには興味はあった。
だから全てを伏せてチャレンジしてみたんだ。
両親にも、あれこれ煩い親戚連中にも何も言わないで……




 最初のテーマは異邦人だった。
メイクアップアーチストがアチコチいじくり、国籍不明の別人になっていく。

エクステンションや付け睫は自分の可能性を広げてくれたんだ。


初めは何人かのモデルの中の一人に過ぎなかった。

でもかなり目を引いたようで、たちまち人気モデルの仲間入りとなったのだ。


コテコテに仕上げたメイクでバレないはずだった。
何時しか俺はその世界に没頭していた。


共演したトップモデルとの恋のチャンスもあった。
美人に言い寄られた時は悪い気はしなかった。

でもその時、曾祖父の遺言を思い出したのだ。
何故だか判らないけど、俺は夢の中で逢った姫のが忘れられなかったのだ。


その姫に運命を感じていたのかも知れない。




 モデルの仕事は順調だった。
でも、知らないうちに素顔のスナップが撮影されて許可なく掲載されてしまったのだ。
それはあのトップモデルが、俺にフラれた腹いせに仕組んだことだったのだ。
どうやら俺を業界から抹殺する魂胆だったらしい。


でもそのお陰で、生徒の一部がざわめき始めて学校側も知ることとなったのだ。


それで結局親戚連中に吊し上げられて、モデルの仕事を辞めなければいけなくなったのだ。




 清水と佐々木の担任は、俺の高校に派遣された教育実習生だったんだ。

だから俺がモデルだったこと知っていたんだ。


あの高校は、他の高校と吸収合併して今はない。
だから、男子学生が女子高での教育実習が可能だったのだ。




 俺は前歴を隠して教育学部に入った。

だから知る人は居ないと思っていたんだ。

まさか……
教育実習時に、再会するなんて思ってもいなかったのだ。