「責任とか、あんまり重く考えないで下さいね。僕は参加していただくことに意義があるって思ってるんで」
「そんなスタンスで良いんですか?」
「はい、むしろ、そのスタンスで興味があるならグッと入ってきて頂きたいんですよ。作ったAiセンターでなにが出来るかどうか、そういうアイデアが欲しいんで。発想は柔軟な方がいいですから。発展途上の分野なので、可能性や応用範囲は未知数なんですよ。責任でガチガチだと思いつくものも思いつかないでしょ? そういう守りの姿勢は好きじゃないんで、僕」
「まぁ、それならわかります」
「独自性のあるプランを売ったり出来たらなぁって思ってます。ここのセンターならでは、といったようなね、まぁそういうのをブランド的に確立したいって思いますね」
「…売るんですか?」
「ええ、新しい切り口の画像解析ソフトとか開発して売りたいなぁって。Ai鑑定の収入だけを当て込んでいくような収益は考えてないです。資金があれば研究も進みますからね。あと、セミナーですね。ソフトとブッキングとかで。進んだ分ノウハウを開放してそれがまた法医学のレベルを底上げするし、資金源にもなる…そういうポジティブなループですね。研修をレベル切って段階的に設定して、その先に講師の資格かなんか作って、講師派遣も考えてます。ゆくゆくは日本の中だけじゃなく、海外も視野に入れてグローバルに市場を考えたいんです。主にアジア圏かなぁ」

 やはりアメリカ帰りというのは視野の広さが違う、と僕は素直に感心した。ドクター清水は商売人的な素質もあるんだなと、僕は自分にないソフト開発とかセミナーとか、センターのブランド化の話を人ごとのように聞いていた。

「…やだなぁ、岡本先生聞き上手で。僕だけ気持ちよく話してるじゃないですかぁ」
「いえ、そういうわけでは…」
「僕は岡本先生の話し、もっと聞きたいなぁ」

 その言葉にうっかり忘れていたいつもの縛りを思い出し、急激に口と気持ちが重くなった。もし僕が彼に自由に話すとしたらまずお礼だろう。自殺の屍体を僕から遠ざけてくれてありがとうございます、と。だがそんなことを言えるはずもないし、なにか僕に興味を持たせるようなキッカケを作ることは絶対的に避けねばならない。僕はつまらない偏屈な人間のままで居るべきなのだ。僕は余計なことを話さないように、疲れた頭で集中を余儀なくされた。