日曜の夜、自宅のPCで例のサイトを見ていた。色々なメッセージが書き込んである。例えば…

『すぐ出来る人いませんか? 受けで普通体型です。思いっきりしゃぶり合いしたいな』とか、
『デカいのくわえたい! ◯◯市。メールと写メ下さい』とか、
『最初はお友達からでもOK。気に入ったらしましょう。長く付き合える人希望』とか、
『20代前半で未経験ですが、開発されたいです。年上のマッチョな方いたら連絡下さい』とか、
『年下M希望。こちらガチムチの30代。これでもかってくらいエロくイジメたい。足あり』とか……

 つまりそういうのがひたすら書き込まれていた。しばらく読んで軽くカルチャーショックを受けた。これにメール出したり、これで連絡取り合ったり出来るのか…ツワモノだ…と、僕は自分の物差し上で、佐伯陸を強者判定した。

 泊まった日の翌日、佐伯陸の家で、「どんなサイト見てその人たちと会うことになったの?」とまるで事件に関連した質問というような顔をして、彼のPCでざっと見せてもらったのがこれだった。中身はともかく、取り敢えずサイトの名前だけ目で覚えて帰った。作戦は成功だった。

 そして今それを検索して見ている。その中身を再びつぶさに読んだ僕は、作戦の成功にも関わらずそのままノーパソをそっと閉じたい気分になった。今更ながらに自分から行動するというのが不得意だということを再認識させられるだけで、ここでなにかをどうにかするなんて到底考え難いことのように思えた。しゃぶりあいですか…勝手にして下さい。僕はいいです。

 それでも、あの発作が来たらこの感覚も変わるんだろうか? 精神と肉体とが乖離したあの切迫した性衝動の最中に、もう一度このページを開いてみる必要が僕にはあった。解剖を終えて朦朧としながらいつものようにこの部屋に帰還し、震える身体をなだめながらサイトを開き、気が狂いそうな性感の中で僕は30代のドSガチムチ会社員の希望する痩せ型年下ドM受けとしてその男性を欲しくなるのだろうか? そしてたまらずに“誰でもいいです後腐れなく一晩だけ抱いて下さい”などとわななく指でキーボードを叩き、あらぬメッセージを送ってしまうのだろうか?

 そこまで考えて、少々遠い目になった。いまのテンションではその想像の一切が圧倒的非現実的な妄想にしか見えなかった。