「彩!!相川君も来るらしいよ。来週の夏祭り!」



同期の小谷恵美が、電卓を打つ私の耳元で囁いた。



相川君…その響きに私の胸は高鳴る。



『相川君』というのは、私の配属された営業部に時々応援に来てくれる総務の男の人。




確実に先輩なんだけど、何歳なのか、何年目なのか、それさえも知らない遠い存在。



知っている情報は、名札に書かれた『相川』だけ。




私と恵美の間では、入社してすぐの頃から『相川君』と呼ばれていた。



昔、営業部にいたらしく、忙しい時期になるとよく顔を出してくれる。



新入社員の私達にも、気さくに話しかけてくれるが、頷くことしかできないくらい高嶺の花。




恵美も私も、そして、その他の女子社員も、相川君に憧れていた。