私は彼をぶって大きく震える手を、もう一方の手できつく包み込む。
恐ろしかった。
本当は、あの言葉を聞いた瞬間、恐ろし過ぎて心臓がピタリと動きを止めそうだった。
ふたりが消えたら……なんて思ったら、頭の中がまっ白に染まった。
だけど、考えるのよりも速いスピードで、彼の頬を叩いていたんだ。
だって、そんなこと絶対に許せない。
いくら強いからって、真央やお父さんまで奪う権利がどこにあるの?
涙目になりそうな瞳でいっぱいいっぱいになりながら、彼へ軽蔑の視線を向け続ける。
だけど彼はぶたれた頬を指で触り、感心するように目を細めた。
「君、想像以上に面白いね。他人のことになるとムキになって」
彼はやがて頬杖をついて、私を舐めるように見つめてくる。
「特別に、俺の名前を教えてあげるよ。響だ。兄貴みたいなおもしろみのない男に、君はもったいない」
なにを言っているのか意味がわからない。


