「そんなまさかっ」
そんなの作り話に決まっている。
現実に、あやかしなんているはずがないじゃない。
私は自分の家の神社さえ信じてないんだから。
引きつった口角を必死に引き上げて私は豪快に笑う。
早いとこ帰ろう。私はくるりと踵を返す。
「あの……、こんにちは。こんなところに君ひとり?」
私は目が飛び出しそうなくらいに見開く。
振り返るといつの間にか、赤いチェックシャツを羽織った男の人がいた。
いったいいつからいたの!?
彼は首を傾げ、訝しむように私を見ている。
内心焦っているけれど、私は苦し紛れの笑顔を取り繕って答える。
これ以上、あやしい女子高生だと思われるのは痛すぎる。
「あっ、えっと、こんにちは。実は野良ネコを追ってきたら見失っちゃって」
無駄にへらへらと笑う私に、彼はやっとにっこりとした。


