急いでテーブルに本とカバンを投げ置き、音などお構いなしにぐいとイスを引いた。

けれど、その時いびきのような音が聞こえたのだ。

ハッとしてあたりを見回すと、本棚の陰に人が。

烏天狗が現れたみたいに心臓が跳ね上がる。

悲鳴をあげそうになって、とっさに口を抑え込む。

誰もいないと思ったのに窓際にはなんと、うずくまるように座っている男子がいたのだ。

あまりの驚きで心臓がバクバクと騒ぎ、目は見開ききったまま。

まさか、そんな場所に人がいるなんて思ってもみなかった。

これだけ音を立てても、たえず寝息が聞こえてくる。

私は思わず息を殺し、テーブルに身を乗り出して目を凝らしてみた。

小さな体はこぢんまりと折り曲げられ、立てられた膝の上から“絶品! イタリアン”なんて書かれた本がのぞいている。

短めの癖っ毛は太陽の光を受けてまっ赤に染まっていた。

顔は本に埋められていて見えないけれど、クラスメイトの猫丸くんだろうか……。