顔の筋肉が痛くなるくらい、楽し過ぎて笑顔のたえない夜だった。

私の中で昨夜は、生まれて初めての一番明るい夜だった。

けれど、もうそれが遠い思い出のように感じられる。

つい昨夜のことだというのに。

なのに朝が来たら、私はもう人間界の服に袖を通している。

この村の人らしさのかけらもなく、私はただの女子高生に戻っていた。

まるで、長く壮絶で、それでいて幸せな夢から、目覚めたみたいに。

たくさんのことがあった異世界での私の夢は、昨夜の宴の終わり、紫希の一言でパチンと音をたてて冷めた。

『明日の昼までには出立の準備をしておけ。お前を人間界まで送っていく』

たったその一言で、私は現実に引き戻された。

当たり前のことなのだけれど、あまりにこの村と溶け込むことができたから、ここを離れるということに私は呆然としてしまったのだ。

言われるままに出発の支度をしたけれど、心だけどこかにしがみついて、なぜかついてこない。