私たちは、彼がとどめた空気にのまれていく。
全員が動きを止める。
その時、彼はまっすぐ前を見つめた。
私ではなく、隣の紫希だけを。
無表情の顔で唯一、瞳だけが殺気だって黒く光を放つ。
「こんなところに、よくのこのこと出てこれたものだ。それも、恥の象徴の翼を広げて!」
琴弥の腕が何もかもなぎ払うように広げられる。
紫希は臆さずその翼を大きく広げる。
紫希は表情ひとつ変えずに琴弥を見据えている。
だから私も誇らしく前を向いている。
だって、その翼は汚れてなどいない。
紫希のお父さんが、彼に送った大切な翼。
琴弥のように重く罪の染みたものじゃない。
この翼は、みんなを守るために彼が出したもの。
なにを恥じることがあろうか。


