私は自分だけ軍の後ろに隠れるようなあんな男にはなりたくない。

「自分だけ安全圏内なんて随分な総代様ね! とっとと引き返しなさい」

私はもう一度、その影に隠れているヤツめがけて叫ぶ。

何度、どんな攻撃をしてきても、私は隠れない。

片手にはお母さんの欠片。

背中には、一緒に刃を持ってこの村を守ろうと立ちあがった仲間。

それだけあれば、私は絶対にここに立ち続けていられる。

下がってなるものか。

すると、相手側がざわめきだし、目の前の烏天狗たちが一斉に左右へはけていく。

私は固唾をのんで目を凝らした。

黒い道を進み来る、大きな翼を持った男。

「誰が安全圏内だと? ふざけるな、半妖と組みする人間よ」

力伝わってくるような、低く強い声に、足元から寒気が駆けあがる。

でも、私は足に力をこめ、彼と真っ向から対峙する。