まるで、私が目障りだとでもいうように。

私はもうそれ以上彼を見ずに歩きだす。

下りる途中、手すりに寄りかかる彼を見上げそうそうになったけれど、ぐっと顎を引く。

重い足で階段を駆け下りていく。

誰の声もない階段に響く自分の速い足音が、妙に侘しかった。

そしてやっと一階についた時、私は我慢できずに振り返った。

ぶら下げていたカバンが、足元へ静かに落ちる。

上の踊り場からはほのかな夕日が降り注ぐ。

そこには煌めくガラスの破片はなく、鏡のように階段を映し出す元通りの窓があった。